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2025/11/08

触って伝える宇宙

― 宮城教育大学にて、インクルーシブ天文ワークショップを実施しました ―

2025年11月8日、宮城教育大学にて、視覚障がいのある子どもとその家族を対象としたインクルーシブ天文ワークショップを実施しました。本企画は、科学へジャンプ実行委員会主催のもと、特定非営利活動法人Curascopiumが共催として参加し、当日は30〜40名の参加がありました。

NASAデータから生まれた「触れる太陽系」

本ワークショップの中心となったのは、太陽系の惑星・冥王星・月、計10天体の触覚模型です。これらはNASAの公開データをもとに、直径約15cmのサイズで3Dプリンターを用いて制作されました。天体表面の凹凸もデータに基づいて再現されており、指先で触れることで地形の特徴を具体的に感じ取ることができる高精度な模型となっています。

模型そのものが「説明する教材」ではなく、「対話を生むきっかけ」となるよう設計されている点が、このワークショップの大きな特徴です。

見えない状態で、伝え合うという体験

ワークショップでは、この模型を用いて、視覚障がい者と晴眼者が共に参加できる体験設計を行いました。

視覚障がいのある参加者は普段どおり触覚を使い、晴眼者はアイマスクを着用して視覚情報を遮断した状態で模型に触れます。

そして、視覚を使わずに得た触覚情報だけを頼りに、パートナーへ天体の特徴を言葉で伝えるというプロセスを通じて、相手がどの天体を触っているのかを説明します。

晴眼者・弱視・全盲、さらに先天性・後天性といった多様な見え方の違いがある中で、「触れた情報だけで相手に伝える」という行為は、単なる知識理解にとどまらず、他者の感じ方や認知の違いに気づくきっかけとなりました。

雑談のような空気が生んだ、安心感のある学び

当日のワークショップは、いわゆる「授業」や「講義」の形式ではなく、雑談を交えながら進める対話的なスタイルで行われました。そのため、参加者は緊張することなく、それぞれのペースで模型に触れ、感じたことを言葉にすることができました。

実際に、参加していた子どもたちは終始楽しそうな様子で、自然な会話の中から「どう伝えるか」「どう受け取るか」を試行錯誤していました。

この安心して失敗できる空気感が、感覚や表現の違いを受け止め合う場を支えていたように感じられます。

継続的な参加が生む、深まりのある学び

本ワークショップには、毎年参加している子どもや、同じ家族が複数回参加しているケースも見られました。継続して参加することで、模型の捉え方や言葉の使い方が少しずつ変化し、学びが積み重なっていく様子がうかがえます。

家族参加型であり、かつ晴眼者と視覚障がい者が共に参加できる形式として定着している点も、この取り組みの大きな成果の一つです。

Curascopiumの役割と、今後の展開

Curascopiumは、本ワークショップにおいて

  • 触覚模型の制作
  • ワークショップ全体の設計
  • 当日の進行および解説

を一貫して担いました。

今回の実践は、「科学へジャンプ」という枠組みにとどまらず、他地域・他会場へも展開可能なモデルとしての手応えを得る機会となりました。今後は、学校や科学館、地域イベントなど、さまざまな場で同様のワークショップを実施し、インクルーシブな天文教育の輪を全国へと広げていくことを目指しています。

視覚の有無にかかわらず、誰もが宇宙に触れ、語り合える場をつくる。その一歩として、本ワークショップは確かな意味を持つ取り組みとなりました。